- Q
ダニがいるとどうなる?
- A
ダニは目では確認できないくらい小さな害虫なので、害が表面化しないうちは意識もせず放置している人が多い。
しかし、知らず知らずのうちに我々の健康を害し、身体を蝕んでいる危険性がある。
したがって、キチンとした知識を身につけ対策を講じることをお勧めしたい。
身近にいるのはどんなダニ?
ダニ目に属するダニは、現在、世界で約1万種が記録されており、かなりの数の未確認種がいるとも言われているが、家の中に潜んでいる主な種類はチリダニ(ヒョウダニ)類。
そして、チリダニが増えるとそれを捕食するツメダニが出現する。
その他、イエダニやコナダニも身近に存在している。
また、野外にはマダニが生息している。
ダニの生態は?
多くの種が、体長0.2~0.5mm程度と肉眼で確認することが困難なくらい極小。
我々の垢やフケ・食品クズ等の有機物を食べて生きる。
害獣に寄生する種もあり、一匹のネズミに2500匹のダニが寄生していたという研究もある。
四季を通してみると、気温25~30℃、湿度60~80%になる時季(梅雨~秋口)に急激に繁殖する。
冬季は気温が低くなり空気も乾燥するため、自然に倣うとダニは減ってくるのだが、住宅は気密性が高く、暖房器や加湿器の使用で気温・湿度ともに下がらないため、ダニは一年中発生しているのが現実である。
特に注意が必要なのは?
チリダニ類は人を刺咬することがないが、ツメダニ・マダニは人を刺咬するので厄介。
吸血されることもあり、刺咬されると痒みと紅斑をともなう炎症が起こる。
ただ、その身体は微小で肉眼では確認しづらく、通常の場合、被害に遭うまでは気づかないことがほとんど。
マダニに至っては、ライム病・日本紅斑熱・SFTS(重症熱性血小板減少症候群)等の感染症を媒介するので、野外で活動する際は注意が必要である。
アレルギーも要注意?
要注意なのは直接的に被る皮膚炎だけではない。
それは、「アレルギー」。
ダニの死骸や糞を吸い込んだ場合、ダニが保有する「アレルゲン」と呼ばれる原因物質が人間の免疫反応を過剰に働かせてしまいアレルギー症状を引き起こすことがある。
現れやすい症状としては、鼻水、鼻づまり、くしゃみ等があり、病状としては、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎がある。
アトピー症状やアレルギー性喘息を患っている人の70~80%はダニやハウスダストが原因とされており、悪ければはアナフィラキシーショックを起こすこともあるため、アレルギー体質の人は特に油断禁物である。
どんなところにいる?
ダニが住みやすい環境は、人が住みやすい環境でもある。
掃除がキチンと行き届いているように思える住居でも、「必ず」と言っていいほどダニは潜んでいる。
風通しの悪いところや加湿器をよく使うところ等、室温20〜30℃、湿度60%以上の高温多湿な環境を好み、併せて、掃除されていないところ等、食品クズ、フケや垢、髪の毛など、餌となるものがあるところには発生しやすい。
具体的には、布団や枕などの寝具は、体温と汗によって高温多湿の状態になりやすいうえ餌となる皮脂やアカもあるため、発生しやすい場所となる。
また、ソファ・カーペット・畳もホコリがつきやすく、湿気や熱もこもりやすいため、発生しやすい場所となる。
日頃の対策は?
気温と湿度をコントロールすることをはじめ、こまめな掃除や洗濯によってダニの餌となりそうなものを絶ったり、寝具やソファー等に発生を抑制するための予防スプレーを吹き付けたりすること、つまり、ダニが住みにくい環境をつくることが大切。
布団・ジュータンの下や、衣装ケース・タンスの衣類下に敷く市販の防ダニシートはダニの発生を抑える効果があるし、殺虫系の薬剤とは異なり人体に害もないので安心して使える。
また、ネズミが発生原因になるケースも多く、ネズミを営巣させないことはもちろん、侵入させないことも対策のひとつとなる。
ネズミ対策の詳細は、当ホームページ「衛生害獣 ネズミが出て困っているが駆除できる?」が参考になるはず。
対策の心得は?
肝心なのは、快適な居住環境を維持するために「減らす」「増やさない」ということ。
ダニを全滅(絶滅)させるのは現実的ではなく、そのために躍起になることは、無駄な時間、無駄な労働、無駄な費用を生じさせるとともに、無駄なストレスを抱えることになりかねないため おすすめできない。
駆除法は?
ダニを駆除・抑制するには、その種類・生態、発生原因を調べ、それに合わせた駆除法を選ぶ必要がある。
特に、不特定多数の人が出入りする公共施設や営業店舗などでは定期的な衛生消毒を推奨したい。
主な駆除方法としては、高周波・マイクロ波・熱湯を使った「加熱処理」、天日干し・通気・乾燥機を用いた「乾燥処理」、掃除機をかけたりクリーニングしたりする「清掃処理」、殺虫剤・消毒剤を使った「薬剤処理」の四つが挙げられる。
加熱処理とは?
短時間での効果が期待できるのは「加熱処理」。
ダニは気温25℃、湿度60%になると爆発的に繁殖しはじめるのだが、低温では発生が抑制され高温では死滅させることができる。
天日干しも一定の効果はあるが、50℃以上の環境を20分以上維持しないと死滅させられないため、布団乾燥機を使うことがおすすめ。
これを使えば、60~70℃の高温でダニを死滅させることができる。
乾燥処理とは?
ダニは、適度な湿気がないと生きられず、脱水した場合は数日から二週間程度で死滅してしまうほど脆弱な生き物である。
したがって、湿度コントロールすることも有効な対策となる。
梅雨時などは除湿機やエアコンの除湿機能を活用するなどして相対湿度が終日60%を下回るようにし、外気が乾いている時季なら換気をこまめにすること。
外に干せる布団やカーペットを天日に当てて湿気を逃すのも有効。
ただ、陽に干すと布団の表面は乾きやすいが、内部は乾きにくいためダニは内側に逃げてしまう。
そのため、陽に干すことでダニが棲みにくい環境をつくることはできるが、それだけで全てのダニを駆除することは期待できない。
「乾燥処理」は即効性に乏しいので、これは「死滅」を目的にするのではなく「発生抑制」を目的に実施した方が合理的である。
清掃処理とは?
「清掃処理」としては掃除機をかけることが有効。
近年では、殺菌機能がついた専用のダニ用掃除機(布団クリーナー)も多く出回っており、これらは大きな効果が期待できると思われる。
ただし、生きているダニは繊維にしがみつくため、掃除機では吸い取れないことが多いよう。したがって、「加熱処置」「乾燥処理」「薬剤処理」をした後の死骸をターゲットにして行う方が得策である。
また、枕カバーやシーツ等、洗濯できるものはこまめに(一週間に一回以上が理想)洗濯することも有効な対策となる。
薬剤処理とは?
「薬剤処理」では、市中のドラッグストア等でも手に入るような殺虫剤を使用する方法。
燻煙式とスプレー式が代表的な製品になる。
燻煙剤は、部屋の隅々まで殺虫成分が届くため、家具家電の裏側などに隠れたダニも駆除できる。
対象がカーペットや畳の場合は直接噴射(エアゾール)タイプの薬剤が使いやすく、畳に対してはノズルを刺して薬剤を注入するタイプもある。
部屋にあるソファー・クッション・ぬいぐるみ等には、速乾性のあるスプレーが使いやすい。
薬剤処理の注意点は?
食品をはじめ食器・調理器具などに薬剤が付着しないよう保護したり、人やペットが近づかないようにしたりする等の事前準備が必要。
製品にある用途・用法を守るのはもちろん、化学物質過敏症の人が立ち入る可能性がある場合には燻煙殺虫剤の使用を避けるべき。
また、燻煙剤は煙感知タイプの火災報知器に反応することがあるため、火災報知器にカバーをかける等の対策を講じる必要がある。
そして、燻煙後は純分に換気することが大切。
また、ダニの死骸を除去しないと薬剤処理の効果は半減してしまうので、掃除機がけ等、清掃の必要性は高い。
本当に困ったら専門業者へ
多くの場合、前記のような対策を講じれば状況は改善するが、爆発的に繁殖した場合など、自力ではどうにもできなくなった場合は、専門業者へ相談するのも一手。
プロの仕事でも全滅(絶滅)させることは難しいが、かなりの改善を見込むことはできるはずである。