- Q
競売物件取引のサポートはしてくれる?
- A
一般物件に比して多くはないが、当社が扱う案件の中には競売物件もある。
依頼者の多くは、転売を目的に物件を落札した不動産会社。
建物の汚損やゴミ等、ある程度のリスクがあることを承知のうえで落札したものの、実際の物件には覚悟していたリスク以上の問題があることが発覚し、当社に相談が入るケースが多い。
当社は、そこに生じている特別汚損の問題を片付けていく中で、競売物件取引という投機性の高い商いにチャレンジする不動産会社(落札者)の喜怒哀楽と商魂を垣間見つつ、事情に応じた費用と柔軟な作業で不動産会社の商いをバックアップしている。
競売とは?

競売とは、債権者が裁判所に申し立てをして、債務者の不動産を強制的に売却する制度で、「強制競売」と「担保不動産競売」の二種類がある。
強制競売は、裁判所が発行する公的文書の債務名義にもとづいて債権が回収される方法。
通常、消費者金融やキャッシングでの貸借について債権者は抵当権を持たないが、債務名義があれば強制競売にかけて債権を回収できるのである。
もう一つが担保不動産競売。
競売物件の多くは この担保不動産競売で、これは抵当権または根抵当権が設定された不動産が競売にかけられ債権が回収される仕組み。
実際のケースでは、住宅ローン破綻によるものが多い。
公売とは?

競売と混同されやすいものに公売がある。
競売は金融機関が申し立てることによって裁判所が売却手続きをするものであるが、公売は国税庁や地方自治体が不動産売却を進めること。
具体的には、国税や地方税などの税金が滞納となった際に、国税庁や地方自治体が不動産を差し押さえて売却するのである。
競売物件とは?

競売物件とは、物件の所有者(債務者)がローン等の支払いを滞らせた場合において、金融機関や保証会社などの債権者が裁判所に申し立てることにより裁判所が差し押さえ、その命令によって強制的に売却される不動産のこと
不動産業者や個人を介さず裁判所の権限で売却が進められるところが、通常の不動産取引とは異なる。
実例としては、事務所や店舗ではなく住宅ローンの滞納が原因となるケースが圧倒的に多い。
住宅ローン破綻の実状は?

住宅ローンの破綻率について、全国的に統一されたデータはない。
「2%」「3.5%」「4%」、特定の金融機関の実績や識者の推計によると、こんな数値が出てきている。
大雑把に均すと「約3%」といったところだろうか。
比率としては低いように見えるが、「50人に1人~25人に1人は破綻している」と考えると少なくないような気もする。
破綻の原因は?

破綻の原因としては、多い順から、給与減やリストラ、事業の失敗、離婚、病気・ケガや転職、定年退職、浪費や無計画収支、同居人の死亡等が挙げられる。
近年は、新型コロナウイルスに起因するものも多いと思われる。
年齢層としては50代が最も多く、次は60代。
上に列記したように、家を購入した当初は想定もしていなかった問題に見舞われて破綻する人が多いよう。
ペアローン・二馬力家計・教育費など、30~40代で破綻する人は離婚が根本原因になっているケースが多い。
また、頭金なしやボーナス頼みで購入している人の破綻率も高い。
この実状からは、そもそもの経済力が見合っておらず、“借りられる額”と“返せる額”を混同し、無理な返済計画を立ててしまう人が少なくないことが推察できる。
債務者はどうなる?

遅延期間が短ければ、1~2回の滞納くらいで金融機関が大きく問題にすることはない。
しかし、3回以上、または61日以上の滞納を生じさせると信用情報機関に事故情報として登録され、それは5年間記録されることとなる。
まず、滞納1~2か月で請求書が届き、3カ月くらいで催告書が届く。
そして、3~6カ月で期限の利益喪失通知が届き、6~8カ月で競売開始決定通知書が届く。
12~16カ月経つ頃には期間入札通知書が届く。
債務者にとっては過酷な日々になるかもしれないが、滞納がはじまってから所有権を失うまでに一年以上の猶予があるので、金融機関との交渉や任意売却など、その間に打てるだけの手を打つことが大切である。
裁判所の手続きは?

競売の手続きは、裁判所が主導して進められる。
まず、債務者の債務不履行により売却命令が発出される。
次に、物件の評価が確認されたり権利関係が調べられたりする。
それから、入札公告において入札情報の公開と入札者の募集がなされる。
入札は指定された日時に行われ、最高額を入札した者が落札者として決定。
裁判所が売却許可を出し、正式なかたちで落札者に所有権が移転する。
一連の手続きは法にもとづいて事務的に進められるため、物件の引き渡しは、通常の不動産取引に比べると短い期間で行われることが多い。
一般的な不動産取引との違いは?

競売取引と一般取引では、取引の主体とプロセスが大きく異なる。
一般の取引では、売り手と買い手が交渉のうえで価格が決まるが、競売では裁判所主導のもと入札によって決まる。
また、安い買い物ではないので、一般取引では、当然、買い手は物件を内覧するが、競売では内覧ができないことの方が多い。
更に、競売では住人が居住したままのケースや、物件の引き渡しに応じないケースも珍しくなく、立ち退き交渉が必要になることもある。
通常の取引では、明け渡しの問題は起こり得ないが、競売ではありがちなことである。
競売物件のメリットは?

第一に挙げられるのは、市場価格より安く購入できるケースが多いということ。
下記のように、競売物件には一般物件にはないリスクがあるため、予め価格が調整(競売市場修正)されており、一般物件に比べて2~3割程度安く購入できると言われている。
また、不動産会社を通さないため、一般の不動産市場に流通しにくい多様な物件に出会えることもある。
あとは、裁判所が介入していることによる取引の透明性の高さや、所有権移転や抵当権抹消の登記といった煩雑な手続きは裁判所が行うため、買受人はシンプルな手続きで済ませることができる。
競売物件のデメリットは?

第一に挙げられるのは、内覧が難しいということ。
内装細部の汚損や劣化、設備の老朽化や故障、悪臭等々、写真では伝わらない問題を抱えていることがある。
大規模リフォームや設備の入れ替えが必要になることも少なくない。
また、住人が退去せず居住し続け、退去・明け渡しに応じないケースもあるし、「占有者が家財を置いたまま出て行った」といったこともある。
その場合は、退去交渉や法的手続きが必要となる。
そういった問題を片付けるには、相応の費用や手間がかかることになり、結果的に、割安で購入したはずの物件が割高になってしまうようなケースも生じている。
その他にも、競売取引においては売主にあたる者がいないので、契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)が存在しないこともデメリットになる。
物件に瑕疵(欠陥・破損・汚染など)があっても、原状回復の責任は買受人が負わなければならないのである。
競売物件内覧制度とは?

「競売物件内覧制度」とは、裁判所の命を受けた執行官が買受希望者を物件に立ち入らせて見分させる制度で、差押債権者の申し立てにより発令される内覧実施命令に基づいて実行される。
差押債権者が申し立てをせず、または申し立てを取り下げたり、内覧実施命令が取り消されたりした場合には実施することができず、また、物件占有者(居住者:所有権者)が立ち入りを拒んだ場合も実施することはできない。
内覧をもっとも欲するのは買受希望者のはずだが、買受希望者には申し立ての権利はなく、また、実質的には、当該占有者の同意や協力が不可欠であるところが実現性を欠く原因となっている。
2004年4月1日施行の改正民事執行法では、立ち入りの拒否について罰則が設けられたが、所有権やプライバシーの問題が絡み、実際は、法改正当初に わずかに行われただけで、ほとんど行われてない有名無実の制度となっている。
競売物件の情報はどう集める?

まずは、裁判所が提供する「物件明細書」「評価書」「現況調査報告書」、業界用語でいう「三点セット」を確認する。
これらは、買受けを希望している者であれば、一般の人でも裁判所で確認することができる。
物件明細書には、対象不動産についての権利関係などが記載されている。
評価書には、裁判所から指示をうけた不動産鑑定士が評価した物件の適正価格が記載されている。
ただ、鑑定士が行うのはあくまでも評価で、その評価額は、実勢価格(市場価格)等を考慮せず算定される。
現況調査報告書には、執行官が実際に対象不動産に赴いて調べた内容が記載されている。
執行官が直々に調査したものなので、参考資料の中では最も信頼性が高いと言われている。
報告書の重要ポイントは二つで、一つ目は占有状況。
二つ目は、滞納金・遅延損害金に関することと内部写真。
写真は、物件内部の状況がわかる唯一の資料となるので極めて重要。
あとは、自身でも実際に現地に赴いて外観や周辺環境を観察することも大切である。
ヒューマンケアの競売物件事例

依頼者は地元の不動産会社、相談の内容は消臭消毒。
現場は、市街隣接の住宅地に建つ木造二階の一軒家。
不動産会社が転売目的に落札した競売物件。
築年数は十年余、外観上、特段の問題は見受けられず。
それでも、市価より2割以上 安く手に入れることができたようだった。
この不動産会社は、競売物件の転売を主たる事業にしているわけではなかったが、地元周辺の物件を中心に、それまでにも競売物件を扱った経験を持っていた。
取引も慣れたもので、裁判所が用意した物件調査資料を充分に吟味し、外観も入念に観察したうえで入札。
無事に落札し、引き渡しを受け、あとは売り物に仕上げるためのリフォームや清掃をして売りに出す算段となっていた。
しかし、引き渡しを受けてから大問題が発覚。
家財残置物は撤去されていたものの、内装建材や設備は激しく汚損し、家中に刺激臭に近い悪臭が充満していたのだ。
不動産会社は、事前に「犬が飼われていた」という情報は得ていたようだったが、当方の見立てでは、飼われていたのは犬ではなく猫。
しかも“多頭飼い”&“飼育崩壊”の状態。
ただ、写真だけで細かな惨状が推察できないのはやむを得ないことでもあった。
結局、床・壁・天井の多くを解体撤去し、トイレ・浴室・台所などの水廻設備も全撤去。
極端に言うと、屋根と柱と外壁だけを残した状態に。
そのうえで、当社が三週間くらいかけて消臭消毒を施工。
それから、中を新しく造りなおし、新品の設備機器を設置。
外観は中古住宅のままながら、中身は新築みたいな家となった。
不動産には、需給バランスに乗った市場価格というものがある。
掛かったコストそのままを売値に乗せられるわけではない。
不動産会社は、一儲け狙ってこの物件に手を出したのだろう。
しかし、原状回復するためにはかなりの出費を強いられたはずで、転売利益が圧迫されることはもちろん、場合によっては赤字に転落してしまうことも容易に想像できたのだった。


