特殊清掃「戦う男たち」無を更新いたしました。
終 ~淋しさと救い~
11月11日は、1年365日のうちで、もっとも多くの「記念日」が登録されている日らしい。
たまたまだが、その日は、私にとってもある種の記念日。
それは、愛犬“チビ犬”が死んだ日。
先日の11月11日は、八回目の命日だった。
この犬は、その昔、仕事で出向いた自殺現場に取り残されていたのを引き取ったもの。
死んでしばらくの間は、事あるごとに目に涙が滲んでいたものだが、八年も経った今では、想い出して涙することもなくなったし、想い出すことも自体も少なくなった。
ただ、スマホの待受画面も、ず~っとチビ犬のまま。
これは、ある年の冬、海辺に出掛けたときに撮ったもの。
四角い画面にはおさまりきらないくらいに拡大した顔面ドアップの写真を待受画面にして、変わらぬ想いを大切にしている。
私は、もともと犬好きなので、散歩中の犬を街中で見かけたりすると、ついつい視線を向けてしまう。
とりわけ、チビ犬と同じ犬種を見かけたときは、視線は釘付け。
先日も、街で、飼主の女性と散歩している同じ種の犬を見かけた。
近寄って声をかけ、あわよくば触らせてもらいたいくらいだったけど、女性からすると、見ず知らずの中年男にいきなり声を掛けられては迷惑な(怖い)ことかもしれないので、それはやめておいた。
とりあえず、立ち止まって、可愛らしい犬をしばらく眺めながら、チビ犬との楽しい想い出に浸った。
そして、いつの間にか笑顔を失ってしまったこの顔に、ささやかな笑みを浮かべた。
ただ、遠ざかっていく犬の後ろ姿を見ていると、何とも言えない淋しさにも襲われてしまった。
ただ、どんなに淋しくてもチビ犬は戻ってこない。
どんなに懐かしくても・・・
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