- Q
大家としてどのように孤独死・事故死などの不動産リスクに備えるか?
- A
不動産経営には色々なリスクが含有される。
貸主(大家)としてもっとも心配なのは経済的な収益(家賃収入)だろう。
その他、税金や建物のメンテナンスも気になるところだろうか。
資産運用にはリスクはつきものだが、利益が出なければ元も子もない。
しかし、リスクは目先の金銭以外ところにもある。
自殺・他殺などによって人が亡くなったことがある家屋は「事故物件」と言われる。
以前、「事故物件」との呼称に明確な定義はなかったが、2021年10月8日に国土交通省が、これまでの民事裁判の数々の判例などを参考に議論し、まとめた「事故物件に関するガイドライン」で「病気や老衰による自然死や不慮の事故死以外の死や特殊清掃が必要になる死が発生した物件のこと」と定義された。
つまり、建物内での不慮の死や事故死などで亡くなってしまった場合は、事故物件には該当しないが、発見が遅れ腐敗が進んでしまったり特殊清掃が必要になってしまったりした場合は、それが病気・老衰であっても事故物件として取り扱われることになるということ。
そして、そうした事故物件には、特殊清掃・消臭消毒・家財処分・原状回復工事にとどまらず、長期空室・賃料低減・他住人退去のリスクも発生する。
借主が亡くなっても賃貸借契約は自動的に終了とはならない。
通常の場合、相続人が借主の地位を継承することになり、契約期間中の家賃は相続人に請求することができ、原状回復費用の請求なども相続人に対して行うことになる。
しかし、その相続人が相続放棄してしまうと、借主の地位も継承しないので、原状回復義務も損害賠償義務も相続せず、相続人には一切の請求ができなくなるので注意が必要。
借主に財産がある場合には、裁判所の手続きを経て、その財産から支払いを受けられる可能性もあるが現実的ではないと思われる。
連帯保証人をつけていると、家賃や原状回復費用を連帯保証人にも請求することもできる。
また、賃貸借契約締結の際、連帯保証人をつけていると、家賃や原状回復費用を連帯保証人にも請求することもできる。
ただ、契約更新時の契約書面に連帯保証人の自筆署名・押印が省略されていることが多く、これは、イザというときに争いの種になりやすく、また、近年は、連帯保証人の役割を個人ではなく法人(保証会社)が担うことも多く、そのメインは家賃保証で、退去後の原状回復については充分な補償を得られない契約になっていることが大半であるから注意が必要である。
貸主・借主向けの孤独死保険を取り扱っている短期少額保険会社もある。
昨今では、通常の家賃保証サービスに孤独死保険を付帯している保証会社も多くなり、また、貸主・借主向けの孤独死保険を取り扱っている短期少額保険会社もある。
保険料の負担は発生するが、自分が賃貸している物件が、所有物件が一人暮らし用だったり、物件を貸している人に多くの高齢者がいたりする場合には、加入の検討を推奨したい。
ヒューマンケアの特殊清掃・孤独死の事例
独居用に造られた投資物件で中年の男性が孤独死
画像の現場は、街中に建つマンションの一室。
全戸、間取りは1Rで、独居用に造られた投資物件。
そこに暮らしていた中年の男性が孤独死。
発見がやや遅れ、遺体は相応に傷み、軽度ではあったが汚染・異臭が発生していた。
遺体発見からしばらくして血縁者は見つかったが、近しい間柄でもなく生前の付き合いもほとんどなし。
遺産らしい遺産がなかったこともあってか、血縁者は正式に相続を放棄。
原状回復についての義務・責任を遺族に請求することは諦めざるを得ない状況だった。
賃貸借契約の連帯保証人は保証会社。
家財処分については保証会社が手配・施工してくれたが、特殊清掃・消臭消毒までは担ってくれず。
しかし、放っておけば事態は悪化するのみ。
原状回復に要する期間や費用が増してしまうことをはじめ、公衆衛生上 好ましくないうえ、いらぬ風評を招いてしまうリスクもあるため、貸主は先頭に立って動かざるを得ない状況に置かれてしまった。
高齢者が入居を拒まれるケースが増えている時世だが、孤独死は、高齢者だけに起こるわけではなく、60歳未満が全体の40%を占めるといったデータもある。
発生件数は増加傾向にあり、現代の社会構造や人口構造を考えると、早々には減少傾向に転じず、そのリスクは増すばかりのように思われる。
ならば、対策を練るしかない。
とは言え、“死”に対して人は無力であり、“死”は人が抗うことのできない自然の摂理でもあるわけで、それ自体を防ぐことは極めて困難。
また、早期に発見することも、プライベートな領域に立ち入った特別な警戒監視システムでも備えないかぎり「偶然」といった状況に任せるほかない。
具体的にできることと言えば、事が起こった後、それによって生じる損害を少しでも軽減するような策を講じることくらいである。
幸い、貸主は、孤独死保険に加入済み。
保証金額に上限はあったものの、軽症案件につき原状回復に関する費用はすべてカバー。
貸主は、多少の負担を強いられたものの、大きた負担は免れたのだった。