よくある質問

事故物件となれば関係者への告知義務が生じるのか?

では、「事故物件となれば関係者への告知義務が生じるのか」というと、必ずしもそうではない。

事故物件と告知義務の相関性には課題が多く、これについては、2021年国土交通省策定の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で定義されている。

では、どのようなケースでは告知義務が生じ、どのようなケースでは告知義務が生じないのだろうか。

自殺や殺人、不慮の事故死や原因不明の死は告知が必要?

自殺や殺人、不慮の事故死や原因不明の死は、その事案の発生時期・場所を入居希望者(借主)や買受希望者(買主)に対して告知が必要となる。

また、不慮の病気等などで亡くなってしまった場合は事故物件に該当せず、告知義務は生じないが、遺体の腐敗や損傷が進んでしまい、特殊清掃が必要になってしまった場合は、たとえ病死や老衰死であっても告知義務が生じることとなる。

また、死因や死亡事案発生からの経過期間に関わらず、入居希望者から問い合わせがあった場合や、「告知した方が良い」と判断されくらい社会的影響が大きい事案の場合は、故人や遺族の個人情報やプライバシーに配慮しつつ死亡場所や死因等を知らせることとなる。

 

事故物件に関する告知義務が生じないケースとは?

一方、事故物件に関する告知義務が生じないケースもある。

集合住宅における他住人に対しては、経過期間や死因に関係なく、基本的に告知義務は生じない。

居住者が病院等の外部で亡くなった場合はもちろん、特殊清掃を要しない病気や老衰等による自然死も対象外となり、室内での転倒や階段からの転落等、不慮の事故による死亡も対象外となっている。

また、自殺や他殺であっても事案から3年が経過したところや、死亡事案の発生場所がマンションやアパート等の共用部分や隣接住居・道路等の場合は対象外となる。

ただ、3年経過後でも、異臭が発生するなどして発覚した場合、その時は告知が必要となる。

売買物件の買主への告知期間は?

併せて、この「3年」という期間については賃貸物件の借主に対してのことで、売買物件の買主に対して期間条件は設けられていない。

ただし、問い合わせがあった場合においては、事実情報の提供が貸主にとって不利に働くとしても、虚偽の応答をすることや隠蔽を工作することは社会倫理に反するためおすすめできない。

貸主が事実情報を開示しない意向であっても、事案発覚時は警察や消防が来てそれなりの騒動になるのが常であり、その他の住人の目撃情報や近隣の噂話等で耳に入るリスクも低くはない。

傷口をふさごうとしたことが災いして、逆に傷口が広がってしまうことにもなりまねないため、誠実に対応することが大切である。

ヒューマンケアの特殊清掃・孤独死の事例

老衰をともなった病気で孤独死

画像の現場は賃貸マンション。

そこで孤独死が発生、死因は老衰をともなった病気。

発見されるまで、幾日を要したが、時季は寒冷・乾燥の真冬。

暖房も動いておらず、遺体は軽く腐敗が進んだ程度。

特段の汚染・異臭は発生しておらず。

内装・建具・設備等にはそれなりの汚れや傷みはあったが、故人が暮らしていた年月を考えれば、通常損耗・経年劣化とされるべきレベルだった。

 

というわけで、特殊清掃までは必要なく、当社は消毒と内装リフォームを施工。

天井壁のクロスは貼り替え、建具は一部修繕、あとの床・設備等はクリーニングで復旧。

床も設備もそのまま再使用できたおかげで原状回復費用も膨らまず、その期間も長期には及ばず。

管理会社を通じて、早々に、次の入居者の募集が始められた。

 

ここで課題となったのが前記で述べた告知について。

「事故物件に関するガイドライン」「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」上、告知義務は生じないと考えられたが、それと入居希望者の心理は別物。

衣食住の中の「住」、どこに暮らすか、どんな家に暮らすかは、その人の人生を左右するものであり、それに関わる出費も「人生最大」と言っても過言ではない。

金銭や法律の問題ではなく心の問題。

「知らされていたら入居していなかった」とういう嘆きや後悔に対し、「告知義務はなかった」と突っぱねるだけで済む話ではない。

 

自然死の場合、しかも特殊清掃を要するほどの問題がなかった場合、黙っていても問題はない。

ただ、警察が駆け付けたときは大きな騒ぎになったらしく、遺体が搬出されるときも数人の野次馬が集まったそう。

となると、既存入居者や近隣の誰かが事の次第を知っている可能性は充分にある。

色々なことに考えを巡らせた大家は、黙っていることに躊躇いを覚えたよう。

「風評は心配だけど、後ろめたい気持ちを引きずりたくない」

「大切な部屋なのだから、気持ちよく貸したいし気持ちよく借りてほしい」

その意向に大いに賛同した当方は、過去の経験にもとづいた助言をもって大家の背中を押した。

その後、それほどの間をおかず入居希望者は現れ、新たな賃貸借契約が清々しく締結された。

そして、少し割り引かれた家賃とそれに勝るきれいな部屋に満足し、新たな住人は新しい生活をスタートさせたのだった。

                

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