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タバコのニオイ、何とかなる?
- A
ニオイの中でもタバコ臭は、着きやすく取りにくい類のもの。
そして、愛煙家と嫌煙家の違いがあるように、受け止める者の感覚にも相違が生じやすい。
臭気測定器ではニオイの濃淡は計れるが、良悪の判定や種類の探索まではできないため、消臭は人の嗅覚(臭覚)を頼りにしながらの作業となる。
ヒューマンケアは、清掃作業をはじめ、場合によっては内装工事と組み合わせたかたちで施工している。
以前のタバコ文化は?
昭和の頃は、駅のホームはおろか、電車内でも当然のようにタバコを吸っていた時代があった。
公共施設や飲食店も同様。
また、自家用に来客用に、灰皿の一つくらいは家に置いておくのが当り前。
酒と同様、若者にとっては「大人の象徴」のような憧れがあり、一部の若者にとっては「カッコいい」といった価値観があった。
最初はファッション感覚で吸い始めたものが、そのうち中毒になり、終生の愛煙家となるわけ。
しかし、受動喫煙・副流煙が問題視されるようになり、以降、徐々に人々のタバコ離れがすすんでいるのが現状である。
近年の喫煙環境と喫煙者数は?
近年、喫煙者は著しい減少傾向にある。
2018年7月には、健康増進法の一部を改正する法律が成立。
これにより施設内では喫煙室の設置が必要となり、灰皿を置くだけの青空喫煙所は廃止に。
違反した施設管理者には最大50万円の罰金、違反して喫煙した人には最大30万円の罰金が課せられることになった。
また、加熱式タバコを含めタバコ煙が有害なのは明らかで、主に受動喫煙の被害を防ぐことを目的とした改正健康増進法が、2020年4月に全面施行された。
あるデータによると、1989年の喫煙者の割合は、男性平均55.3%、女性平均は9.4%。
しかし、30年経った2019年には男性平均27.1%、女性平均7.6%とどちらも減少しており、とりわけ男性はほぼ半減している。
喫煙者減少の要因は?
「税収が減るのは困るが、不健康(病気)はもっと困る」といったものが、国(行政)が禁煙の方向へ舵をきった理由なのだろう。
そして、そういった施策を礎にして地域のルールや文化が醸成され、人々の動向に影響を及ぼしている。
喫煙者が減っている理由には、健康志向の高まりといった側面もあるが、路上喫煙禁止や館内全面禁煙など、世の中の喫煙マナーに対する意識の高まりもあると思われる。
また、時代と共に値が上がっているタバコは「贅沢な嗜好品」になりつつあり、人々の節約志向の高まりや「同じ金を費やすなら食事や旅行に使った方がいい」等といった価値観の変化もあるだろう。
タバコはどんな害を及ぼす?
喫煙者は、自らが発したタバコ煙が他者にどのような影響を及ぼすのか自覚していないことが多いようだが、ニコチンを含む多種多様な化学物質を含んだタバコ煙は、わずかな隙間からでも漂い出ていき気づかないうちに拡散する。
そして、そんなタバコ煙に苦しみ、場合によっては重篤な疾病を発症する人もいる。
また、健康に害を及ぼすだけでなく、汚れやニオイによって部屋が物理的に汚損する。
タバコの煙やニオイに悩む非喫煙者は多く、バス・電車・タクシーだけでなく、施設・ホテル・旅館でも「禁煙」としているところが大半となっている。
この流れは、賃貸不動産でも見受けられ、最近では、賃貸マンションやアパートなどの集合住宅で敷地内を全面禁煙にする物件も増えている。
賃貸建物でタバコを禁止できる?
建物賃貸借契約における、室内での喫煙を禁止する特約は有効。
生じ得る汚れやニオイ、近隣トラブル等を想像すると、貸主には特約を設ける合理性があると認められ、同時に契約自由の原則の範囲内にある取り決めであり、貸主が借主との間で禁煙特約を設けることは、それが室内全面にわたる特約であっても法的に問題はない。
また、ベランダ(バルコニー)内での喫煙を禁止することも法的に有効と解される。
住人間のトラブルを避けるために、ベランダでの喫煙も一律に禁止し、快適な居住環境を維持しようとするものであるから有効というべきである。
ただ、正確な規定によると、ベランダは「専有部分」ではなく「共用部分」に当たる。
他の共用部分とは異なり、入居者(借主)のみ使ってよいという専有使用権が認められている部分で、当然、入居者は善管注意義務を守らなければならず、賃貸借契約で「禁煙」が定められておらず、管理規約で「共用部は火気厳禁」とだけ定められていたとしてもタバコは吸ってはならない。
実際、共用部の火気を厳禁する規約を設けている集合住宅は多く、事実上、ベランダでの喫煙も禁止されていると解釈できる。
喫煙可能な物件なら大丈夫?
賃貸借契約でも管理規約でも「禁煙(火気厳禁)」が定められていなかったとしても、一定の配慮は必要。
同居人への配慮や残留するタバコ臭の問題があって、禁煙でない部屋に暮らしていてもベランダや換気扇下で吸うことを習慣としている人は少なくないだろう。
換気扇で排気しながらの場合、一見は問題ないように思われるが、気流システムによっては共用部に煙が出たりしたりして他人に影響が及ぶことがある。
ベランダも同様。
当人からすると外で吸っている感覚なのだろうが、その煙は隣や上の部屋に届くことがあり、他住人から貸主や管理会社へ苦情が持ち込まれることがある。
あと、風向きによっては、煙の問題だけでなく灰やニオイが洗濯物に付着したりしてトラブルに発展する可能性もある。
多くの集合住宅では、賃貸契約において他の住人への迷惑行為を禁止しており、ベランダでの喫煙が禁煙(火気厳禁)規定に抵触していないとしても、状況によっては「迷惑行為」とされることがあるので注意が必要である。
ベランダでの喫煙はクレームに繋がりやすく、トラブルを避けるためには、火事を起こさないように注意するのはもちろん、時間帯や風向きに気を配ったり、本数を減らしたりするなどして、周りに迷惑をかけないようにすることを心掛けたい。
原状回復に負担が生じる場合がある?
喫煙によって内装や建具が汚れたり、ニオイが残ったりした場合は、退去時に支払う原状回復費が割高になる可能性があるため、そのことも理解しておく必要がある。
実際、タバコ汚染やニオイについて相談を受けることも少なくない。
状況が深刻な場合、内装洗浄など、特殊清掃をともなう消臭作業が必要になることもある。
加えて、ルールを破って喫煙をした場合は違約金を請求されたり、退去を勧告されたりすることもある。
稀なケースながら、健康被害を理由に慰謝料を請求されることも。
強制退去が認められるケースは少ないが、規約違反がトラブルに発展する可能性が高いことは間違いない。
仮に、そこまでのトラブルに発展しなかったとしても、近隣住民と揉め事を起こしたら住みづらくなるだけで、快適な生活が送れなくなってしまう。
そんな事態に陥るのを避けるためにも、決められたルールを遵守することはもちろん、マナーもしっかり守りたいものである。
ヒューマンケアのタバコ臭の処理事例
近年、減ってきているとはいえ、葉タバコの愛好者はいる。
日常的に室内でモクモクやるわけだから、当然、部屋は ある種 燻製されたような状態になる。
入居者が長く安定的に部屋を借りてくれることは、大家にとっても喜ばしいこと。
ただ、入居者が喫煙者の場合は、それだけ汚染異臭が深刻化することを意味する。
当然、期間が長ければ長いほど深く燻され、内装や建具も黄色や茶色に染まってしまう。
しかし、大家にしても入居者にしても、部屋が茶色く染まるくらいのタバコ汚染を想定している人は少ない。
それに伴う原状回復工事や費用を心積もりしている人も然り。
窓や建具は、掃除で ある程度きれいにすることは可能だし、天井や壁のクロスを新品に貼り換えれば見違えるほどきれいになる。
つまり、一般の清掃業者や内装業者でも、クリーニングや改修によって汚れを物理的に取り除くことは可能なのである。
問題はニオイ。
「掃除すればとれる」「クロスを貼り換えれば消える」等と、軽く(甘く)考えてしまうケースが多く、見た目がきれいになってもタバコ臭が残留することはよくある。
内装の下地(ボード等)にまで浸透したニオイがジワジワと滲みでてくるのだ。
結果、表面上の原状回復が終わった段階で「タバコ臭が残っている」「このままでは入居者を募集できない」となり、「何とかならない?」と当社に問い合わせてくるのだ。
問題の中核は汚れではなくニオイであり、その原因は内装の下地等。
長期にわたって染み着いたニオイは一朝一夕に消えることはない。
施工済みの原状回復作業がクリーニングのみの場合はほとんど問題ないのだが、キチンと消臭しないままクロスや床を貼り換えてしまったようなケースは厄介。
下地が露出した状態だと専用機材を使った洗浄ができるのだが、新しく貼ったクロスや床材を剥がす選択をする依頼者(大家・入居者・管理会社等)はほとんどいないため、その後の消臭作業の効率は悪くなるし、見込める成果も厳しめに想定せざるをえない。
長い目で見ると、再びタバコ臭が滲み出てくる可能性はあるのだが、仮にそうだとしても軽微なレベルのはずで、入居者の生活臭の方が勝ると同時に、入居者も慣れてしまって気にならなくなることで解決している模様。
原状回復に着手する前に相談してもらいたいのは山々ながら、これまで、上記のような事例でもクレームや問題が発生したことはない。