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生活保護受給者の孤独死とヒューマンケア
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当社が扱う孤独死現場で、故人が生活保護受給者であったケースは珍しくない。
そしてまた、故人に身寄り(相続人)がないことも多い。
同じ孤独死であっても、生活保護受給者の場合は、一般的な人のケースでは起こりにくい難題が持ち上がることが多い。
同時に、費用、諸手続き、担い手など、人生の後始末には故人とは無縁だった人に負担が生じることが多い。
数々の仕事をこなしているヒューマンケアは、そんな人を強くサポートできる会社である。
生活保護受給者が孤独死してしまった
生活保護受給者が増え続けている時世にあって、自己所有の住居で暮らしている人はわずかで、ほとんどの人が賃貸物件に暮らしている。
そして、その家賃は、自治体や地域によって定められている範囲で保護費から賄われている。
貸主(大家)と行政が連携している側面もあり、一棟のアパートの入居者がすべて生活保護受給者であるようなケースも珍しくない。
時と部屋を異にする中で、これまでに当社も特殊清掃や遺品整理のために一つのアパートに複数回出向いたことがある。
生活保護受給者が孤独死した場合、事後処理において一般とは異なる対応が必要になることがあり、実状では貸主(大家)側が主体的に動かないと片付かないケース多い。
生活保護受給者は高齢化している? 独居老人は増えている?
言うまでもなく、現在、我が国は超高齢化社会となっている。
やや古いデータになるが、生活保護を受給している高齢者世帯は、2000年には33万世帯だったものが2016年には84万世帯にまで膨らんでいる。
更に、一般世帯を含む65歳以上の一人暮らしは、1980年は男性19万人・女性69万人だったものが2015年には男性192万人・女性400万人となっている。
比較的新しいデータをみても、生活保護世帯の55.6%が高齢者世帯で、そのうちの単身世帯は51.2%となっている。
高齢の生活保護受給者も独居生活者も著しく増えているのである。
孤独死と生活保護との関連は?
賃貸物件における孤独死の中で、生活保護受給者が占める割合は低くないと感じている。
生活保護件数が増加の一途をたどっている中、高齢者世帯が占める割合も上がっており、その中には多くの独居高齢者もおり、社会から孤立して生活している人も少なくないものと思われる。
そのような状況では、自ずと孤独死のリスクは高まる。
更に、そんな人々が無縁死となる確率も高く、生活保護・孤立無縁・孤独死に直接的な因果関係はないとしても、諸々の事情が間接的かつ相互に影響しているものと思われる。
生活保護受給者の実状は?
生活保護を申請する理由は経済的困窮(貧困)ではるが、病気、ケガ、障害、老い等々、その前提になっている事情は人それぞれ。
そんな中で、申請したくてもできない人、申請しても受理されない人、申請を阻もうとする役所、申請を受理しない役所、不正受給、貧困ビジネスの温床等々、この制度は色々な問題を抱えている。
孤独死の現場では、故人が生活保護受給者であることが少なくなく、孤独死の向こうに孤立死や無縁死が透けて見えることが多々ある。
生活保護受給者の相続人は?
生活保護受給者であっても一般の人同様、亡くなったら被相続人となる。
つまり、相続権を有する相続人がいても不自然ではないということ。
しかし、生活保護受給者については、大した財産を保有していないことが建前になっているため、相続人がいたとしても相続を放棄するケースが少なくない。
単に経済的(遺産)なことだけではなく、生前から疎遠だったケースも多く、相続にあたってはすべてがプラスになるとは言い切れず、そういった関係性が相続を放棄する理由の一つにもなっているのだろう。
生活保護受給者の相続における注意点は?
生活保護受給者が持っていた銀行預金は一般的なケースと同様に相続人が相続することができる。
ただ、生活保護の受給権は、生活に困窮する当人にのみ認められた一身専属の権利であるから、相続人が引き継ぐことはできない。
また、生活保護受給者が保護費を過分に受け取っていた場合など、受給金を返還すべき要件に該当した場合は、相続人が全額または一部の返還義務を負うことがある。
相続した銀行預金を葬祭費用や保護費の返還に充てるケースもあるが、金銭の使途によっては相続を放棄できなくなることがあるので要注意。
その他の遺品についても同様で、安易な処分は相続放棄の妨げになるので慎重に行う必要がある。
生活保護受給者の遺品整理は誰がやる?
生活保護受給者が暮らす賃貸物件の家賃は、原則として保護費で賄われている。
また、無縁死の場合、火葬や遺骨は自治体が面倒をみてくれる。
しかし、遺品整理や家財処分など、部屋の退去費用までは自治体は対応してくれない。
それについては、基本的には親族が担うべきことなのだが、現実には、身近なところに頼れる親族がいないといったケースが多く存在する。
仮に、民法で定められている法定相続人がいたとしても相続放棄をするケースが多く、そういった場合は、結局のところ大家や管理会社が負わざるを得ないことになる。
生活保護受給者の遺品整理の費用は?
故人に相続人や保証人がはいればその人が負うべき。
しかし、現実には、そういった人がいないケースが多い。
近年では、賃貸借契約の保証会社が家財処分まで担うケースも多い。
また、時世に対応した孤独死保険によって賄われることも多くなってきた。
そういったサポートがない場合は、大家や管理会社の負担となることが多い。
ちなみに、生活保護を支給していた自治体が何かしら助成してくれるといったことはない。
生活保護受給者の葬送儀式は?
生活保護は、国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障するものであるため、基本的には当人が生きている間に稼働する制度である。
したがって、当人の死亡によって、その機能は失われる。
そうは言っても、遺体をそのまま放置してしまうのは、公衆衛生上・倫理上、ゆるされるものではない。
また、生活保護受給者が亡くなったとき、扶養義務者(葬祭執行者)自身もまた生活保護受給者で生活に困窮していたり、遺族以外の人が葬祭執行者だったりするケースも少なくない。
そのため、葬祭扶助制度が設けられている。
その内容は、「検案」「死体の運搬・安置」「火葬・埋葬」「納骨・その他葬祭に必要なもの」となっており、支給される扶助費は自治体や故人の年齢によって異なるが、成人である場合は おおむね20万円、12歳以下である場合は16万円余を上限に設定されている。
ただし、遺影・祭壇・供花等の費用は含まれず、扶助費で宗教儀礼やセレモニーを行うこともできない。
生活保護受給者の遺骨は?
葬祭扶助には、墓や納骨先の費用は含まれない。
つまり、遺骨の世話は生活保護制度の範疇外ということ。
遺骨は、民法上で祭祀財産と定義されているわけではないが、「遺骨は祭祀財産であり祭祀継承者に帰属する」という最高裁判例がある。
ただ、「財産」といっても相続財産とはまったく別物であるため、相続放棄をしたとしても祭祀財産を引き継ぐことはできる。
しかしながら、引き取り手が現れないケースや引き取りを拒否されるケースはままある。
それには、墓や納骨先の問題、手間や費用の問題、精神的な負担、生前の関係性など、相応の理由がある。
そんな遺骨の多くは行政の管理下で保管され、通常3~5年後に合葬墓に納められる。
そして、以降は、いわゆる「無縁仏」となって弔われていくのである。
ヒューマンケア孤独死遺品整理の事例
古いアパートの一室で孤独死が発生。
亡くなったのは老年の男性で、生活保護を受給して生活。
遺体が発見されるまで数日を要したものの、寒冷の季節で、経過した日数ほど腐敗は進まず。
特段の汚れも異臭もなく、置かれていた家財の量も少なめ。
財産らしい財産はないはずだったが、それでも、法令に基づいたプロセスは踏まなければならず、警察は親族を探索。
警察の尽力により親族は見つかったが、血縁は遠く、その中に法定相続人はおらず。
そして、当たり前のように、皆、本件への関りを拒否。
そうは言っても、いつまでも部屋をそのままにしておくわけにはいかない。
管理会社が、かかる費用の一部は加入していた保険から、残りは大家が負担するというスキームを組み、家財処分と内装改修が行われた。
ただ、家財の量は多くなく、また、遺体による汚染や異臭もなく、内装設備も通常の生活による汚れや経年による傷みがあるだけで、孤独死現場でありながらも 比較的 費用を抑えることができたのだった。